江戸時代、太平の世になると、皆、骨董や絵画、茶器などを欲しがるようになり、江戸に良いものが無くなると、それを求め地方へ買付けに出かける果師と呼ばれる古美術商があらわれる。
そんな古美術商の中には、お宝を見つけると、持ち主を言葉巧みに騙して安値で買い叩き、それを江戸にもってきては、高値で売りつけるというずる賢い者もいたそうです。
「猫の皿」は、そんな古美術商と持ち主である茶店の店主とのやりとりをネタにした落語です。
あらすじ
ある時、古美術商が地方の茶店でとんでもないお宝を発見する。
なんと、茶店で飼われている猫の餌が入った皿が、江戸に持ちかえればすぐにでも300両で売れるという「柿右衛門」の逸品だった。
それを見た古美術商は、「ここの店主は皿の値打ちが全く分かっていない」と思い、この皿を買い叩こうと企む。
そして古美術商は、野良猫同様の猫を膝に抱え上げ「ご主人、私はこの猫がどうも気に入った」「是非、私に引き取らせてくれないか」と持ち掛け、「もちろん猫はタダでもらってはいけない、餌の鰹節代として2両で譲ってくれ」と猫を2両で買い取ると、「猫も皿が変わると餌も食べにくかろう」と皿も一緒に持ち去ろうとする。
すると、主人は皿だけを取り返し、「これは初代柿右衛門の名器でございますから、この皿は手放せません」と言い放つ。
古美術商が「なんでそんな名器で猫に餌をやっているんだい」と尋ねると、主人は「その皿で猫に餌をやっていますと、たまに猫が2両で売れますもんで」
果師と呼ばれる古美術商が、旅先の茶店で見つけた皿を買い叩こうとするが、店主の方が一枚上手だったという噺。
噺の中に出てくる「初代柿右衛門」は、乳白色(濁手)の地肌に赤色系の上絵を焼き付けるという柿右衛門様式と呼ばれる磁器の作風を確立したとされ、その作品はヨーロッパなどにも輸出されマイセン窯などでは模倣品も作られたという。
↓「猫の皿」を映像化したNHKの番組「超入門!落語THE MOVIE」の映像が見れます
https://www.youtube.com/watch?v=grv2dfQ8DKo